韓国・釜山の大学生らを招いた「日韓こども食堂ネットワークフォーラム」が12月7日、太宰府市の筑紫女学園大学で開催されました。こども食堂の成り立ちなど双方に相違もありましたが、子どもにとって幸せな居場所を作ろうという思いは共通していました。こども食堂の日韓国際フォーラムは、国内でもあまり例がなく貴重な機会となりました。
参加したのは、韓国側が釜山市の新羅大学の学生20人や釜山総合福祉館の館長ら、日本側は筑紫女学園大学、久留米大学の学生100人のほか、市民、大野城市や春日市のこども食堂運営者のみなさん。主催者を代表して福岡県こども食堂ネットワーク代表の大西良・筑紫女学園大准教授が「日本国内のこども食堂は1万箇所近くになって、公立中学校とほぼ同数。地域のセーフティネットになっています。韓国でも積極的に取り組んでおり、双方の理解が深まるよう願っています」とあいさつしました。太宰府市の楠田大蔵市長からの応援メッセージも読み上げられました。
新羅大のソン・ジヒョン助教授が基調講演。韓国には4200個所のこども食堂があり、近年増加傾向にあるなどと話しました。こども食堂の成り立ちに関して、「韓国は血縁重視社会なので、家族が中心になって担ってきた。家族が無理なときは公的サービスの出番になる」と説明。日本については、地縁や企業中心社会で地域共同体型の取り組みが多いと分析して、「文化的相違が背景にあるが、日韓がミックスする形がよいかもしれない」などと解説しました。
この後、国際シンポジウムに移り、釜山総合福祉館のチョウ・ユンヨン館長と春日市の「奴国の里ふれあい子ども食堂」の松藤美由紀さんが、こども食堂の現状と課題について報告しました。チョウ館長によると、韓国では2019年ごろからこども食堂が始まった。「敬老食堂からこども食堂に移っていくケースが多かった。無料ということへの偏見も根強かった」などと説明。保護者の認識を変えることやボランティアの育成など試行錯誤を繰り返したという。今後は公的サービス中心から、地域住民が主体的に運営できることが目標。その上で、「子どもにとって幸せな居場所づくりであることは日韓同じだと思った」と話しました。
松藤さんはこども食堂にはボランティアが50人も協力してくれていると説明。市内には7箇所のこども食堂があり、いずれも住民が自主的に立ち上げたという。「子どもだけでなく、お年寄りやすべての人の居場所になっている。思いやりの心を育むことが目標。最近では、防災にも力を入れ、炊き出しの訓練もやっています」などと、取り組みの幅が広がっている様子を話しました。こども食堂には毎回150人の参加があり、うち50人は子ども以外だということです。
会場の学生からは「こども食堂に来られない子どもはどうしますか?」「公的サービスには限界もあるのでは」などと質問もあった。松藤さんらは「間口を広くして、だれが来てもよいと呼びかけています」などと答えていました。全国こども食堂支援センター「むすびえ」から特別に参加した川添華子さんは「こども食堂は2012年にスタートし、全国で急速に普及しています。居場所とは、認めてもらえる関係性のある場所づくりです」とあいさつしました。
(福岡県こども食堂ネットワーク広報担当:馬郡昭彦)